フォレスタ Vol.8 [俳画・短歌・漢詩] 山口了一さん 山口澄子さん
今回、山口了一(ヤマグチリョウイチ)さん山口澄子(ヤマグチスミコ)さん、ご夫婦の「輝き」についてお話をお聞きしました。リョウイチさんは明治生まれの御年103歳(M43.11.16 日)であられ、妻のスミコさんは御年90歳(T13.01.24)であられます。お住いの初島町にある「善福寺」の住職をされていました。現在は、103歳ながら訪問リハビリテーション(自宅でリハビリテーションを行う介護保険サービス)を受けておられます。妻のスミコさんは、漢詩や短歌に親しまれ、リョウイチさんは俳画を楽しまれていたとのことで、取材当日も元気にお話を聞かせて下さいました。
有田市初島町里にある善福寺は1504年(永世元)年創建された歴史あるお寺であり、敷地内にある銀杏の木は樹齢約400年にもなり、秋が見ごろだそうです。映画「となりのトトロ」の世界に入り込むような迫力です。そんな歴史ある善福寺の住職として長年つとめられておりましたが、現在は息子のショウコクさんが住職をされております。過去には長年の功績をたたえられ、有田市文化勲章を受章されておられます。現在も夫婦仲良く、すっかり耳が遠くなったリョウイチさんに、やさしく耳元で「おじいちゃん」と声をかけるスミコさんが印象的でした。
写真は文化勲章受章式の様子だそうだそうです、とても緊張したと当時のことをお話してくださいました。しかし真面目なリョウイチさんは、受章に恥じぬように、その後もより一層精進され続けているとのことです。103歳のリョウイチさん、耳元で大きな声で質問すること数回、お返事のはじめに「ん!んあ~」と元気な声を出して、頭を上下にゆすりながらうなずき、そしてゆっくりと一言一言思い出しながら質問に答えてくださいました。
今回はよろしくお願いします!
さっそくですが、何から聞けばよいか迷いますが、まずは奥様のスミコさんが短歌と漢詩を始めたきっかけや、続けていて良かったことやエピソードなどがあれば教えてください。
短歌は女学校の頃から親しんでいました、文化部のクラブ活動で行われていましたからね。だから短歌歴は60 年以上になります。短歌界では有名な故:前登志夫氏により添削を受けるために短歌研究社に20 年近く投稿を行い常に上位に入っていたとの事です。
「如是我聞」(にょぜがもん)と書かれた短歌集の本!これは自費出版されたそうだ。
他にも今までに3巻ほど出版されましたが、知り合いに人気があり手元に残っているのはこの1冊だけだそうです。1日に30首は必ず短歌を書いていたとのことです。90歳になられた現在でも20首や30首はすぐに出来るとのことです。短歌の楽しさは「自分の頭の中で思っていることが五七五になった時が一番うれしい」とのことです。
境内の奥から出てきたのは、まるで海賊の宝箱のような大きな木箱!ふたを開けるとその中には趣味の短歌や俳画、漢詩の作品の多くがおさめられていました。また本棚にも書籍がびっしり!
続いて漢詩に関して始めるきっかけなどをご質問させていただきました。漢詩は、善福寺の先々代が親しまれていたとのことで、子供たちがある程度手が離れたときに「千字文」の本(漢詩の教科書)があったことや、もともと詩吟もされていたこともあり漢文の勉強をして意味などを知って詩吟をすることもよいと思い始めたそうです。
※千字文は「天地玄黄」から「焉哉乎也」まで、天文、地理、政治、経済、社会、歴史、倫理などの森羅万象について述べた、4字を1句とする250個の短句からなる韻文である。全体が脚韻により9段に分かれている。ここまで来ると正直、難しい。
「ここで一息とかれてはどうですか」
と、息子であり住職のショウコクさんが、お茶をそっと出してくださいました。飲んでみて!?ものすごく香ばしい味?「これ何かわかりますか?」と質問が・・。
何かの木の実ですか? → 正解は「ごぼう茶」
ごぼう茶を飲んで境内を眺めて頭をリセットできました、ひと息ついたところであらためて、
漢詩は奥が深くてびっくりしました。こんなに難しい漢詩は誰かに師事されたのでしょうか?
黒潮吟社の故:高橋藍川氏(たかはしらんせん)に師事されたとのことです。汽車にのり日高まで通われたとのことです。お弁当を持ち、朝一番の汽車に乗り夕方には戻ってきたとのことです。
そんなスミコさんは現在の兵庫県川西市出身で7人兄弟の長女として生まれ大阪府立扇町高等女学校を卒業されたとのことで本当に90歳?と思うほど質問に対しての返答がキビキビされているうえ、私に分かりやすいように説明してくださったりしてくださり時折、私に「暑くないですか」と気を使って扇風機を向けてくださったり、お茶を入れてくださったり、また逆に質問してくださったりとても楽しかったです。
漢詩の面白さについて教えてください。
漢詩のおもしろさは「思った通りに書けないこと」「難しいこと」辞書をひいて考えて、完成した時に「よし!また書こう」と思えることが励みになる!それが面白みですね。
御年103歳90歳と思えないお2人、長時間の質問にも熱心に対応してくださいました。夫婦2人合わせると約193歳。もうこの言葉しか思いつきませんが「これからも元気にしてくださいね。」最後になりましたが、リョウイチさんの俳画を数点ご紹介します。
たくさんありがとうございます!
最後に、俳画の楽しさや思いを聞かせてください!
ん~「今日はありがとう」あっはっは!と大きな声で言ってくださいました。
不思議なことに元気な声を聞いたら楽しさが全て伝わりました!息子のショウコクさんもお忙しい中、お手伝い下さりありがとうございました。(2013.07)